マッサージ師・鍼灸師・整体師がわいせつ行為と言われたら?対処法や資格への影響について弁護士が解説

はじめに

考え事をしている女性

マッサージや鍼灸、整体の施術は、身体に直接触れることが避けられません。そのため、施術者としては通常の手技のつもりであっても、利用者が「わいせつな行為をされた」と受け止めてしまい、後日、被害届や口コミ・SNSでの告発に発展することがあります。

近年は性犯罪に関する社会の目が厳しくなり、2023年7月には刑法が改正されて「不同意わいせつ罪」が新設されました。施術という密室性の高い場面は、まさに新しい規定が想定する状況の一つであり、施術者が捜査の対象となる事案も現実に生じています。

一方で、身に覚えのないまま疑いをかけられてしまうケースもあります。いずれの場合でも、初期対応を誤ると、逮捕・勾留や、資格・営業への深刻な影響につながりかねません。本コラムでは、群馬県高崎市・前橋市に拠点を置く弁護士法人山本総合法律事務所の弁護士が、施術者の方が知っておくべき法的なポイントを解説します。

施術行為がわいせつ行為とされた事例

整体を受けている様子

実際に問題となりやすいのは、次のような場面です。

説明のないまま下着の中や胸部・臀部に触れた ——リンパの流れや骨盤の歪みを整えるといった目的があったとしても、事前の説明と同意がなければ、利用者は「必要のない行為をされた」と受け止めます。

施術の必要性を超えて長時間、同じ部位に触れ続けた ——手技の一環かどうかの線引きが問題となり、利用者の体感が重視されやすい場面です。

「治療のために必要」と説明して性的な部位に触れた ——後述するとおり、改正刑法はこうした「誤信させる」類型を明確に処罰の対象としています。

個室・無施錠・スタッフ不在での深夜施術 ——行為そのものよりも、密室性の高さが供述の信用性判断に影響します。

訪問施術やリラクゼーション目的のコース ——医療類似行為との区別が曖昧になりやすく、認識の食い違いが生じやすい傾向があります。

わいせつ行為で問われる罪

手錠

不同意わいせつ罪(刑法176条)

法定刑は6か月以上10年以下の拘禁刑です。改正により、暴行・脅迫がなくても、同意しない意思を形成・表明・全うすることが困難な状態を利用してわいせつな行為をすれば処罰されることが明確になりました。想定される事由には、「予想と異なる事態に直面させて驚愕させること」や、「同意しない意思を表明するいとまがないこと」などが含まれます。施術中に突然性的な部位に触れられ、固まってしまって拒否できなかった、という主張はこの類型に当たり得ます。

さらに、行為がわいせつなものではないと誤信させた場合も処罰対象とされています。「これも施術の一部です」と説明して性的な接触をしたケースは、まさにこの規定が想定する場面です。

不同意性交等罪(刑法177条)

性交や、口腔・肛門への性交類似行為に及んだ場合は、5年以上の拘禁刑という重い罪に問われます。

その他

盗撮があれば性的姿態等撮影罪、施術所外での行為であれば各都道府県の迷惑防止条例違反が問題となることもあります。また、刑事責任とは別に、被害者から慰謝料を請求される民事上の責任も生じ得ます。

【参考】強制わいせつ

被害届や告訴を出されたときの対処法

整体師が弁護士に相談している様子

まずは早急に弁護士へ相談してください。 呼び出しを受けた段階、あるいは被害届が出されたと聞いた段階での相談が理想です。

取調べでは、事実と異なる内容の供述調書に署名しない。 「早く帰りたい」という気持ちから曖昧なまま署名してしまうと、後で覆すことは極めて困難です。黙秘権や署名押印を拒む権利があることを知っておいてください。

証拠を保全する。 予約記録、施術録、防犯カメラの映像、同意書、当日のスタッフの在室状況などは、時間の経過とともに失われます。上書き前の保存が重要です。

被害を訴える方に直接連絡しない。 弁明や謝罪のつもりでも、証拠隠滅や口裏合わせと評価され、逮捕や接見禁止の理由となりかねません。連絡は必ず弁護士を通してください。

逮捕・勾留の可能性に備える。 逮捕されると、勾留を含めて最大23日間身柄を拘束されるおそれがあります。弁護士が、身元引受体制を整えたうえで、勾留を回避するための意見書提出や不服申立てを行います。

【参考】無実を証明したい場合は山本総合法律事務所の弁護士にご相談を

わいせつ行為で無資格になる?

考え事をしている整体師

あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師は国家資格です。各資格法には欠格事由が定められており、罰金以上の刑に処せられた場合や、業務に関して犯罪・不正の行為があった場合には、厚生労働大臣による免許の取消しや期間を定めた業務停止の処分を受ける可能性があります。

もっとも、これらは有罪判決を受ければ必ず免許を失う「絶対的欠格事由」ではなく、事案の内容や情状を踏まえて判断されます。したがって、不起訴処分を得ること、あるいは罰金刑にとどめることが、資格を守るうえで決定的に重要になります。

なお、整体師・カイロプラクターは国家資格ではないため免許取消しという問題は生じませんが、店舗の賃貸借契約の解除、フランチャイズ契約の打切り、報道や口コミによる信用の失墜など、事業そのものが立ち行かなくなるリスクがあります。

【参考】公務員が刑事事件を起こしてしまった時の対処法を弁護士が解説

示談を弁護士に相談するメリット

弁護士一同

不同意わいせつ罪は、被害者の告訴がなくても起訴できる非親告罪です。しかし実務上、被害者との示談が成立しているかどうかは、逮捕・勾留の判断や、起訴・不起訴の判断に大きく影響します。

被害を訴える方の連絡先は、通常、加害者とされる側には開示されません。弁護士が窓口となることを条件に、はじめて捜査機関から連絡先が伝えられるのが一般的です。また、示談書には、被害届の取下げ、宥恕(許す意思)の意思表示、清算条項、口外禁止条項など、後の紛争を防ぐために必要な条項を過不足なく盛り込む必要があります。金額についても、相場から大きく外れない適正な水準で調整することが求められます。

一方で、事実を争う事案では、安易な示談がかえって不利に働くこともあります。認めるべきか争うべきかという方針の見極めこそ、弁護士に相談する最大の意義といえます。

弁護士法人山本総合法律事務所は、高崎市・前橋市の2拠点で、群馬県全域および周辺地域からのご相談をお受けしています。8名の弁護士が在籍し、刑事事件についても初期段階から対応しています。施術中の行為について警察から連絡があった、被害を訴えられている——そうした状況にある方は、一人で抱え込まず、できるだけ早い段階でご相談ください。

初回相談料無料。刑事事件は初期対応の速度で結果が変わりえます。0120-783-981受付時間 平日 土日祝日 9:00-20:00

お問い合わせ