不同意性交等罪は、2023年7月13日施行の改正刑法によって、「不同意性交等罪」が新設されました。不同意性交等罪は、従来の強制性交等罪と準強制性交等罪を統合した新たな犯罪で、従来の罪に比べて処罰範囲が拡大している点がポイントです。
不同意性交等罪を犯してしまった場合、逮捕される可能性があり、起訴されれば実刑判決になる可能性もありますので、すぐに弁護士に相談して適切なサポートをしてもらうようにしましょう。
今回は、不同意性交等罪とは何か、逮捕される可能性のある具体的なケースや前科をつけないための対処法などについて解説します。
不同意性交等罪とは
不同意性交等罪とはどのような犯罪なのでしょうか。以下では、不同意性交等罪の概要について説明します。
不同意性交等罪は刑法改正により新設された性犯罪
不同意性交等罪とは、2023年7月13日施行の改正刑法により新設された性犯罪の一種です。今回の刑法改正では、不同意性交等罪の新設以外にも以下のようなポイントがあります。
- 暴行や脅迫以外の行為も処罰対象に含まれることになった
- 「性交等」の定義が拡大された
- 公訴時効が10年から15年に延長された
- 性交同意年齢が13歳から16歳に引き上げられた
刑法改正により、被害者の同意があったかどうかが重視されるようになりましたので、同意の上で性行為をしたものの、後から「同意がなかった」といわれてトラブルになるケースも増えてきています。犯罪の当事者にならないようにするためにも、不同意性交等罪に関する基本的な知識を身につけておきましょう。
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不同意性交等罪の構成要件
不同意性交等罪の構成要件は、以下のとおりです。
性交等をしたこと
性交等とは、以下のいずれかの行為をすることをいいます。
- 膣への陰茎の挿入(性交)
- 肛門への陰茎の挿入(肛門性交)
- 口腔への陰茎の挿入(口腔性交)
- 膣や肛門に陰茎以外の身体の一部または物を挿入する行為でありわいせつなもの
性交等に関する同意がないこと|8つの類型
不同意性交等罪は、同意しない意思の形成・表明・全うが困難な状態の相手と性交等をした場合に成立します。
被害者をこのような状態にさせる行為には、以下の8つの類型があります。
- 暴行または脅迫
- 心身の障害
- アルコールまたは薬物の影響
- 睡眠その他の意識不明瞭
- 同意しない意思を形成、表明または全うするいとまの不存在
- 予想と異なる事態との直面に起因する恐怖または驚愕
- 虐待に起因する心理的反応
- 経済的または社会的関係上の地位に基づく影響力による不利益の憂慮
誤信を利用したわいせつ行為
不同意性交等罪は、同意しない意思の形成・表明・全うが困難な状態の相手と性交等をした場合だけでなく、誤信を利用した性交等についても成立します。
誤信を利用した性交等とは、以下のような状態で行う性交等をいいます。
- わいせつな行為でないと被害者に誤信させる
- 被害者に人違いをさせる
- 被害者がそのような誤信をしていることに乗じる
被害者の年齢
被害者の同意があっても被害者の年齢によっては、不同意性交等罪が成立します。具体的には、被害者が以下のような年齢だった場合には、同意の有無にかかわらず不同意わいせつ罪が成立します。
- 相手が13歳未満の子どもである場合
- 相手が13歳以上16歳未満の子どもで、行為者が5歳以上年長である場合
【参考】性犯罪の解説
不同意性交等罪の刑罰
不同意性交等罪の法定刑は、5年以上の有期拘禁刑です。
拘禁刑とは、2025年6月1日から施行される新たな刑罰の種類で、従来の懲役刑と禁錮刑を統合し、一本化したものになります。懲役刑と拘禁刑とでは、刑務作業が義務付けられているかどうか同意違いがありましたが、拘禁刑では刑務作業が義務ではなくなり、受刑者の改善更生のための柔軟な処遇が可能になりました。
不同意性交等罪の具体例
不同意性交等罪が成立し得る具体的な行為としては、以下のようなものが挙げられます。
飲み物に睡眠薬を混ぜて意識が朦朧とした相手と性行為をする
相手の飲み物に睡眠薬を混ぜて、意識が朦朧とした相手をホテルや自宅に連れ込んで、性行為をした場合、不同意性交等罪が成立する可能性があります。
なぜなら、薬物の影響により意識が不明瞭な状態では、性交等に同意するかどうかの意思表示ができないからです。
職場の上司という立場を利用して部下と性行為をする
職場の上司という立場を利用して、部下と性行為をした場合、不同意性交等罪が成立する可能性があります。
なぜなら、上司と部下という社会的関係に基づく影響力により、性行為を断ると不利益が生じるかもしれないと考え、自らの意思では性行為を断ることができない状態にあるからです。
相手が同意していると思っていても、このような社会的関係にある人同士の性行為は、後から「同意をしていなかった」といわれるリスクがある点に注意が必要です。
16歳未満の子どもと性行為をする
相手が16歳未満の子どもであることを知りながら性行為をすると、相手の同意があったとしても不同意性交等罪が成立します。
このようなケースでは、「16歳未満だとは知らなかった」などと言い訳する人も多いですが、本人の認識だけではなく客観的な状況から判断しますので、相手の外見、服装、口振り、メッセージのやり取り、SNSのプロフィール画面などから16歳未満であると認識できる可能性があった場合には、罪に問われる可能性があります。
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不同意性交等罪で逮捕されるとどうなる?
不同意性交等罪で逮捕されるとどうなるのでしょうか。以下では、逮捕された場合の流れについて説明します。
逮捕|48時間
警察により逮捕されると、留置施設で身柄が拘束され、警察官による取り調べが行われます。
逮捕には時間制限がありますので、警察は、逮捕から48時間以内に被疑者の身柄を検察に送致しなければなりません。
検察官送致|24時間
検察官は、被疑者の取り調べを行い、身柄後続を継続するかどうかを判断します。
被疑者の身柄拘束を継続する必要性があると判断したときは、送致から24時間以内に、裁判官に勾留請求を行います。
勾留・勾留延長|10~20日間
裁判官は、勾留質問を実施した上で、勾留を許可するかどうかの判断を行います。
勾留が許可されると原則として10日間の身柄拘束となります。
なお、勾留延長も認められるとさらに最長10日間の身柄拘束を受けることになります。
起訴または不起訴
最終的に検察官が事件を起訴するか、不起訴にするかを判断します。
起訴されると刑事裁判により審理がなされ、有罪・無罪の判決が言い渡されます。他方、不起訴になればその時点で釈放され、前科が付くこともありません。
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不同意性交等罪で逮捕・前科がつかないためにすべきこと
不同意性交等罪で逮捕や前科を避けるためには、以下の対処法が考えられます。
被害者との示談
不同意性交等罪で逮捕や前科を避けるには、被害者との示談が重要です。
捜査機関に事件が発覚する前に被害者と示談ができれば、事件化を回避できますので、逮捕や起訴を防ぐことができます。また、捜査機関に事件が発覚後であっても、早期に示談を成立させることができれば、逮捕・勾留からの身柄解放や不起訴処分の獲得が可能になります。
不同意性交等罪は、親告罪ではありませんが、起訴・不起訴の判断にあたっては被害者の意向に配慮することとされていますので、示談が成立していれば、被害者の意向を尊重し、不起訴になる可能性が高くなるでしょう。
自首
捜査機関に事件が発覚する前であれば自首をすることも有効な手段となります。
自首の法的効果は、刑の任意的減軽になりますが、自首をすることで逃亡や証拠隠滅のおそれがないことを示せますので、それにより逮捕を回避できる可能性が高くなります。
ただし、自首をしたことで逆に事件が発覚し逮捕に至るケースもありますので、自首により必ず逮捕を回避できるというわけではありません。
弁護士に相談
不同意性交等罪で逮捕や前科を回避したいのであれば、すぐに弁護士に相談することをおすすめします。
不同意性交等罪は、性犯罪の一種ですので、被害者は加害者に対して、強い処罰感情を有しています。このような状態では、加害者が被害者に直接連絡して交渉しようとしても、拒否されてしまうことが多いでしょう。
しかし、弁護士が窓口になって交渉をすれば、被害者としても安心して交渉に臨めますので、スムーズに示談を成立させられる可能性があります。また、弁護士であれば、示談金の相場を把握していますので、適正な金額による示談成立が期待できるでしょう。
このように、被害者との示談にあたっては、弁護士のサポートが不可欠ですので、早めに弁護士に相談するようにしましょう。
まとめ
不同意性交等罪は、2023年7月13日から施行された新しい犯罪です。最近では、SNSやマッチングアプリなどにより男女が気軽に出会えるようになってきましたが、それに伴い同意のない性行為の事案が増えてきています。同意があったと思って性行為をしたところ、後日「同意をしたつもりはない」などと言われて被害届を出されてしまうこともありますので、十分に気を付けて行動することが大切です。
万が一、不同意性交等罪の疑いをかけられてしまったときは、すぐに被害者との示談が必要になりますので、刑事事件に強い弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士法人山本総合法律事務所では、刑事事件に詳しい弁護士が多数在籍していますので、不同意性交等罪に関するお悩みは、当事務所までお気軽にご相談ください。